アリスギア備忘録

本格3Dシューティングゲーム『アリス・ギア・アイギス』のメインストーリーやキャラエピやらの感想やら考察

御茶ノ水美里江まとめ

御茶ノ水美里江は楓や文嘉と同じ私立星条大学附属第一高等学校の一年生で、人間のフリをしたアンドロイドであるように見せかけて、その実、正体は祖父を傷つけないためにロボットのフリをしているキャラクターである。

彼女について主に絆エピソードをもとに文字に起こして確認していきたいと思う。

時系列

16年前 ある企業の開発責任者である寅二はそこで「Alc003」と呼ばれるアンドロイドを開発した。トラベルオーダーに境界福祉法違反を嗅ぎ付けられたため証拠隠滅の動乱のさなか、寅二はAlc003とともに姿を消す。(「信頼できない語り手」である絆エピソードにおいても、地の文で語られているためある程度信頼がおける情報と思われる)

10年前の誕生日 銀座の撮影スタジオで美里江、父親母親の三人で写真を撮る。寅二にカチューシャを買ってもらう。

10年前 美里江が6歳三ヶ月の頃にAlc003がオーバーチャージによる爆発事故を起こし美里江の両親が死亡、寅二が重傷を負う。

?年前 長い入院生活から寅二退院。美里江が成長期の場合ロボットであることと齟齬が発生するので五、六年は経ってるものと考えられる。爆発事故ですべてを失った悲しみのあまりすべてを忘れて、Alc003を開発していた時代――青年だったころの自分に戻り、美里江を「Alc003」と呼ぶ。美里江は祖父を喜ばせるため〝心〟のないロボットを演じる。このくだりで美里江は本当にロボットのようになり6歳三ヶ月以前の記憶を失う。

現在

寅二の指示でアクトレス試験を受け、トップの成績を取る。後日成子坂製作所に所属。

ピックアップ・アクトレスに出演 スタッフの用意した6歳の頃の誕生日の写真を見て、記憶を取り戻す。

かつての関係を取り戻そうと6歳の誕生日にもらったカチューシャをつけて寅二に真実を伝える。かねてからの願いだった祖父に名前を読んでもらうことは叶ったが、寅二自身が自分のしたことに耐えられず気を失う。

目を覚ました寅二は美里江をAlc004と呼ぶ。真実が祖父を傷つけることを知った美里江は嘘をつき続けることを選ぶ。

美里江の目的

・「今もこれからも祖父と一緒にいることです」

そのために彼女は「〝心〟がないロボットのフリをして」、「爆発事故ですべてを失い悲しみのあまり」「Alc003を開発していた時代――青年だったころの自分に戻った」祖父の妄想に付き合っている。

・唯一の肉親である祖父とかつての関係を取り戻すこと

過去に囚われてしまった寅二に、どうにか自分のことを思い出してもらおうと振る舞うシーンがいくつかある。エピソード3における美里江と名前を呼んでもらおうとするシーン、誕生日を祝ってもらった夢を見たと語るシーンなど。絆5にて正気に戻った寅二に名前を呼んでもらったときにはとても嬉しそうな表情を浮かべ、翌日「Alc004」と呼ばれた時には悲しそうな表情を浮かべる。

・Alc003の名前の意味

ALICEと関係ありか。ペンタゴンシャードのエージェントやモスクワシャードのKGBによると分散暗号化されたALICEはエミッションを通してアクトレスの脳内に潜むとされる。ALICEを宿す目的で造られたアンドロイドかも? しかし、人工エミッションはモスクワシャードの博士をして考えがたいとの評価で単なる一企業が作れるかは不明。

番号は寅二が正気に戻った回数と考えられなくもないが、単にVer.3ぐらいの意味だと思われる。

・寅二が入院している間、美里江はどうしていたのか

老人の元に身を寄せるぐらいなのだから、美里江には他に世話になれるような親族というものがないと考えられる。では、寅二の長い入院の間、彼女はどこにいたのだろうか。孤児としてどこかに世話になっていたのだろうか?

この辺りについて述べられている箇所はない。しかし、高いエミッション能力を持つ孤児というワードはアリスギアにおいて連想される人物がいる。養子として迎え入れられた籠目深沙希や高い能力を持つ孤児を集めた養護施設「佐倉修道院」など――つまり籠目武成である。美里江はトップレベルのエミッション適性値を持ち、さらに学者肌の寅二が教えるには無理がある徒手格闘術、武器戦闘術、射撃術などを美里江が習得していることからも可能性はあるかもしれない。

・本当に美里江は人間なのか

絆エピソードは「信頼できない語り手」であるため、描写された全てが真実であるとは限らない。事実(隊長など美里江と寅二以外の人間を通して語られる点)は美里江が戸籍上はれっきとした16歳の少女で、高い水準のエミッション能力と学力があり、モスクワシャードからは何らかの理由で人工エミッション搭載のアンドロイドであると疑われている点などがある。特にEp3で語られた寅二の考えはその説を仄かしているように見える。

「僕が君のことをAlc003と呼ぶ理由、それは……恐怖だよ。(中略)人間と機械の境界線を見失う可能性があるからだよ。(中略)君を人間として認識してしまうと――僕は間違いなく君に深い愛情を注いでしまうだろう。(中略)最悪の事態が起きた時に開発者として責任が取れなくなる……」「最悪の事態……それはいったい何デスか?」「気づかないうちに僕が君に精神支配されてしまうことだよ」

絆の4と5は人間になりたい美里江が記憶が定かでない老人の精神を、知らず知らずのうちに支配してしまった結果と見えなくもない?

Ep3-1で美里江が愛花の夢を見るというシーンがある。愛花は電撃属性の羊モチーフのキャラなので、おそらく「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のオマージュと考えられる。それを原作とした映画「ブレードランナー」では、レプリカントと呼ばれるアンドロイドが登場するのだが、人間として描かれていた主人公にアンドロイドの可能性を示唆する場面がある。主人公がアンドロイドであるかどうかは観客の解釈に委ねるような作りになっているのである。

もしこの部分を意識しているとしたら、夢や「信頼できない語り手」を用いることで美里江が人間なのかロボットなのかわざと曖昧にしている可能性があるかもしれない。